| 医院名 |
|---|
| 牧港クリニック「集学的痛み治療センター」 |
| 院長 |
| 平良 豊 |
| 住所 |
| 〒901-2131 沖縄県浦添市牧港4-24-7 |
| 診療科目 |
| 麻酔科・整形外科・リハビリテーション科 |
| 電話番号 |
| 098-871-1500 お電話にてお問い合わせください。 |
わが国にペインクリニックが誕生したのは1962年の事で東京大学麻酔科外来(外来医長:若杉文吉)として発足しました。現在では全国のほとんどの大学病院でペインクリニックが開設され、一部の総合病院るに至っています。
またペインクリニック専門の診療所も増加しています。日本ペインクリニック学会指定研修施設349施設、専門医は全国で1581名(2016年)となっています。この間痛みの基礎科学が急速に進歩し、新しい痛みの治療法・薬剤が開発されてきました。しかしながら日本でのペインクリニック誕生から50余年経た今でも、医師の間あるいは患者さんの間でもペインクリニックについて十分な理解が得られていないのが現状です。
ここではペインクリニックについて以下の順でわかりやすく解説したいと思います。
ペインクリニック(Pain Clinic)を訳すると“痛みの診療所”となりますが、痛みはすべての診療科で取り扱うので、説明としては少し不十分な感があります。
そこでペインクリニックをもう少し正確に説明してみたいと思います。痛いのだからそこに痛みを起こす身体的な原因があるだろうと考えるのはごく自然で正しい発想です。
だから患者さんはどこが痛いかによって、自分で診療科を選んで受診します。たとえば眼が痛ければ眼科に、鼻や耳の痛みは耳鼻科に、頭痛は脳外科に、手足や腰痛は整形外科に、腹痛は内科にという具合です。
そこでは痛い所あるいはそれに関係しそうな所の検査を行います。異常がみつかればそれを治療します。痛みは通常それで治ります。しかし、「治ったはずなのにまだ痛みが続く」、あるいは「異常がないのに痛い」、しかも「その痛みは周りの人からは信じられないぐらい痛そうである」。こうなるとどうでしょう?患者さんだけでなく各科専門医の先生もきっと困ってしまうと思います。
このようなときペインクリニックの専門性が発揮されることになります。1980年代後半から痛みの基礎科学が急速な進歩を遂げました。
以前から専門医のなかでは経験的に知られていた“痛みの悪循環”が電気生理学や薬理学の面から解明されるようになりました。
研究では「唐辛子を皮膚に塗って風呂にはいると痛いのはなぜ?」「日焼けした皮膚を叩くととても痛いのはなぜ?」といった一見当たり前の日常の出来事を科学的に解明されています。
また三叉神経痛や複合性局所疼痛症候群(CRPS)と同じ様な症状をラットなどの小動物に起こさせて、その痛みを詳細に研究するようになっています。痛覚変調性疼痛では脳の障害によって痛みが慢性化するというメカニズムもわかってきました。
その中でわかったことは以下のことです。
まさに百害あって一利なしです。痛みをいたずらに長引かせてはいけません。
ペインクリニックの専門医は痛みに対する基礎知識を持ち、痛みの診断に必要な臨床検査の技術を使って個々の痛みの診断をして、治療に結びつけることができます。慢性痛に対しては、公認心理師、理学療法士、作業療法士、看護師、医師などの多職種で構成される集学的治療チームで取り組むことが必要です。もちろんすべての痛みを取り除くことができるわけではありません。
どうしても取り除くことができない痛みの場合は、痛みを持ちながらも生活の質(Quality of Life:QOL)は維持して人生を送ることができるよう手助けをするのも、集学的治療チームの重要な役目のひとつです。

ペインクリニックの対象なの否かは疾患名で決まるのではありません。「痛みの為日常生活が妨げられ、痛みの緩和が急務である」「痛みの緩和が通常の鎮痛薬では不十分」のときです。
たとえば「明日野球の試合があるが、走ると膝が痛いので止めて欲しい」と言われても、これはお断りするしかありません。この場合の痛みは必要な痛みであって、無理な運動をさせないための警告として重要な役割を持っています。
むやみに麻酔剤やステロイド剤を使用して痛みを止めると後に弊害をもたらしかねません。
ペインクリニックの対象となるのは、
などのような、日常生活やしご場合です。
以下の疾患で、かつ上述したような要件をみたす場合にペインクリニックの対象となります。

ペインクリニックを訪れる患者さまの大部分に共通していることがあります。それは診察室で問診が始まったときの「痛みのことを詳しく訊ねられた」「自分の痛みをわかってくれるかもしれない」という驚きと期待のまなざしです。
裏を返せば、これまで痛みのことを訴えても軽視されたり、理解してもらえなかった体験をもっていることが少なからずあるということになります。
これは医師の痛みに対する理解が不十分であること、痛みを他の五感と同様に単なる“感覚”としてとらえていることに起因していると思われます。
そこで痛みの定義と種類について解説します。
2020年国際疼痛学会は40余年ぶりに痛みの定義を以下のように改定しました。
”A unpleasant sensory and emotional experience associated with , or resembling that associated with, actual or potential tissue damage.”
和訳すると以下のようになります。痛みとは『実際の、あるいは潜在的な組織損傷に伴う感覚と情動の不快な体験である。あるいは組織損傷がなくても起こりうる感覚と情動の不快な体験である』
この定義の前半部分は身体に損傷が起きたことに伴う不快な感覚であり、不快な情動体験であると書かれています。この部分は、日常生活でしばし経験する痛みですので、理解しやすいです。一方後半部分は、身体の実際に損傷がなくてもそれぞれに似た感覚と情動の不快な体験(痛み)を感じることがあることが示されています。実際の現場では、どのような検査をしても身体に損傷がないにも関わらず、強い痛みを訴える患者に出会うことは少なくありません。さらにこの定義には以下の6項目が付記されています。①痛みは常に個人的な経験であり、生物学的、心理的、社会的要因によってさまざまな程度で影響を受けること、②痛みと身体への侵害は異なる現象であり、感覚神経の活動だけから痛みの存在を推測することはできないこと、③個人は人生での経験を通じて、痛みの概念を学ぶこと、④痛みを経験しているという人の訴えは重んじられるべきであること、⑤痛みは、通常、適応的な役割を果たすが、その一方で、身体機能や社会的および心理的な健康に悪影響を及ぼすこともあること、⑥言葉による表現は、痛みを表すいくつかの行動の1つにすぎず、言葉を話せないヒトあるいはヒト以外の動物が痛みを感じているはずであることなどに言及しています。
ペインクリニックでは痛みを訴えるすべての人に対して、訴えに共感し、寄り添う診療所を行っています。
痛みを発生の仕組みの面から分類すると3つに分類されます。
第一の痛みは侵害受容性疼痛です。最も一般的に理解されている痛みで、外傷のため末梢神経に機械的外圧が加わったとき起きる痛みです。
傷の度合いと痛みの強さが一致し、傷の治癒に伴って痛みも消えます。
この痛みは以下のような重要な役割があります。
この第一の痛みは生きるためにとても大事な役割があり、もしそれがなくなった場合(日本には1家系に見つかっているようですが、先天性無痛覚症といって生まれつき痛みを感じないという人がいます)。年中傷が絶えず、骨折しやすく、骨折すると非常に治りにくいことになります。
第二の痛みは神経障害性疼痛(神経の働きがおかしくなったために起きる痛み)で、傷の度合いと痛みの強さがつりあいません、傷が治癒しても痛みだけが続きます。
発生メカニズムは
いわゆる痛みの悪循環によって痛みがひとり歩きを始めた状態です。痛みはどんどん悪化し、痛い範囲が拡大し、四肢の感覚の麻痺、運動機能障害、骨がもろくなり、関節の動きが悪くなります。
この痛みは侵害受容性疼痛の時期と重なっていることもあり、急性期には見逃されがちです。通常の痛みよりも激しく傷の具合とつりあわないため、しばしば“痛がりだ”、あるいは“精神的なもの”とされ、そのため患者は主治医に不信感を持ち、関係が悪化していることが多いです。診断の要点は痛みの性質です。
ひりひりとした火傷のような灼熱痛、触るだけで激しく痛む(アロディニア)などの症状、痛い場所の周囲の皮膚温の変化(例えば50肩の時に手の皮膚温が低下または上昇する)があります。
この痛みは慢性的に続くため心理状態にも影響し、不眠、食欲低下、便秘、憂うつな気分、怒りっぽいなどの症状を伴うことが多いです。前者の痛みが有益な役割を持っているのに対し、この痛みは有害なだけで、ひとつの益もありません。
第三の痛みは痛覚変調性疼痛です。『痛覚神経を刺激するような身体の損傷や感覚神経系の病変や疾患がないにもかかわらず、痛みの知覚異常・過敏により生じる痛み。』と定義されています。痛みが長期に続いたり、心理的ストレスが続くと、末梢から脳に至る神経経路の機能が失調して、痛みの信号が強くなって大脳皮質に伝わり、痛みが増幅される現象です。これには心理社会的要因(幼少期のつらい体験、職場や家庭でのストレス)、や心理的不調(身体表現性疼痛障害、うつ病、不安障害、転換性障害)が大きく営業します。
侵害受容性疼痛や神経原性疼痛と同時におきていることもあります。また、最初は侵略受容性疼痛であってもその痛みが長期間続くと不安が広がり、憂うつにもなります。その結果痛覚変調性疼痛が起きてくることもあります。
ペインクリニックでは一般的なレントゲン検査、CT検査、MRI検査、神経学的診察に加え、独特の痛みの検査法があるのでこれらを次に簡単に解説します。
痛みの問診は最も重要で、頭痛や顔面痛はほとんどこれだけで確度の高い診断ができます。問診では以下のようなことを聞きます。
図1:ビジュアルアナログスケール(VAS: Visual Analoge Scale)

また、ペインビジョンとよばれる装置を用いて「痛み度」の測定ができます(図2)。
図2:ペインビジョン

6.サーモグラフィー:サーモグラフィーは皮膚の温度を赤外線カメラで測定して、交感神経の働きや、炎症があるかをしらべる検査です(図3)。
図3:サーモグラフィ

7.薬物テスト:さまざまな薬物(フェントラミン、リドカイン、ケタミン、モルヒネ、チアミラール)を静脈から注射して鎮痛効果をしらべて、痛みの原因をさぐることもあります。
8.心理人格テスト:心理人格テストは質問表に回答していただき、それを解析します。STAI(不安の度合いを調べます。)、SDS(うつ状態の程度を調べます)、CMI(心身相関の尺度)、MMPI(多面的に人格や心理状態を調べます。)
非ステロイド消炎鎮痛薬(NSAID s)は慢性の痛みの患者様で長期に使用すると胃十二指腸潰瘍が危惧されます。
抗うつ薬はペインクリニックでもっともよく使用される鎮痛補助薬です。帯状疱疹後神経痛、複合性局所疼痛症候群(CRPS)などの神経障害性疼痛、痛覚変調性疼痛に有効です。
抗けいれん薬は神経障害性疼痛、中枢性疼痛(脊髄障害による痛み、脳内出血後の痛み)に有効です。
プレガバリンとミロがバリンは神経障害性疼痛に有効です。
これらの薬は眠気、フラフラなどの副作用が出る場合がありますので、運転や危険作業の前には服用を控えてください。
神経ブロック法は ペインクリニックの基幹となる治療手段です。一時的な麻酔効果を期待するのではなく、痛みの治癒あるいは持続的な緩和を期待します。
星状神経節ブロックは様々な疾患に有効で、血流障害で起きる疾患にも有効な治療法です。顔、頭、首、肩、腕、上胸部、背中の痛みに効果を発揮します。
またメニエル症候群、顔面神経麻痺、アレルギー性鼻炎、網膜中心動脈閉塞症、多汗症、腕の動脈閉塞症などの痛み以外の疾患にも効果があります。
しかし、首に注射をするので、さまざまな危険性があります。専門医は精確な注射ができますし、もし仮に合併症が起きても適切な対処ができるので、安全に行なうことができます。
またこの神経ブロックを行ったあとは、2-30分間安静にし、バイタルサイン(血圧、脈拍、経皮的動脈血酸素飽和度)をチェックしてから帰宅します。
次によく行われるものは硬膜外ブロックです。身体の殆どすべての痛みに有効ですが、特に帯状疱疹後神経痛や腰部脊柱管狭窄症、腰椎椎間板ヘルニアの治療に有効です。
この場合は少量の副腎皮質ホルモンと局所麻酔薬を併用します。時に1-2回の神経ブロックで劇的な効果を発揮するので、慢性の腰痛であっても、手術が必要と思われる場合でも試みるべきです。
帯状疱疹後神経痛に対しては繰り返しての注射が必要な場合があるので、入院して硬膜外ブロックを行うこともあります。合併症として血圧が低下する場合があるので、ブロック後は5-60分間の安静とバイタルサインの監視が必要です。
その他保険適応されている神経ブロックは46件ありますが、それらを適宜応用して痛み治療にあたっています。
神経にエタノールあるいはフェノールグリセリンを注入すると神経が破壊され、その神経の支配する部分が麻痺します。
この麻痺は神経がゆっくり伸びて再生するまで(1年から10年)つづきます。その間痛みが止まります。
この方法は身体の一部の感覚が麻痺するので、他の方法ではどうしても痛みが取れない場合にのみ行います。
R5年4月からパルス高周波治療が保険適応になりました。この方法は神経を破壊することなく神経機能を改善して痛みを軽減する方法であり、注目されている方法です。
椎間板の中に造影剤を注入し、X線写真、CT写真を撮って、造影剤の広がりを写します。腰椎椎間板ヘルニア、頚椎椎間板ヘルニアのときに脱出した髄核がどこにあるか、神経の圧迫があるか、痛みの原因となっているかなどがわかります。また、自然治癒が期待できるタイプのヘルニアか、手術が必要なヘルニアタイプなのかの判定ができます。
仙骨裂孔(尾骨の付け根あたり)から針を刺して、硬膜外腔に造影剤を注入します。造影剤の広がり具合をX線写真、CT写真で写しだします。
硬膜外腔の癒着、神経が圧迫される様子、椎間板の突出の具合がわかります。
腰の中央から注射をして硬膜の内側の脳脊髄液の入っている部分に造影剤を注入します。神経根嚢の変形、欠損などから、神経が圧迫される様子、椎間板の突出の具合がわかります。
また脳脊髄液減少症の場合は髄液が漏れる部位を見つけることができる場合があります。
脊髄から枝分かれし、脊柱管から出てくる神経(神経根)に直接注射をして造影剤を注入します。椎間板ヘルニアや腰部脊柱管狭窄症で神経根の圧迫があるかどうか診断するために行ないます。
また造影剤を注入したあとに局所麻酔薬と副腎皮質ホルモンを注入しますので、痛みが劇的に緩和する場合があります。
①Raczカテーテルによる硬膜外神経剥離術:(硬膜外腔癒着症、腰椎椎間板ヘルニア、腰部脊柱管狭窄症)
②硬膜外内視鏡による硬膜外神経剥離術:エピドラスコピー:(硬膜外腔癒着症、腰椎椎間板ヘルニア、腰部脊柱管狭窄症)
③LDISQによる経皮的髄核摘出術:(腰椎椎間板ヘルニア)
④Disc-Fixによる経皮的髄核摘出術:(腰椎椎間板ヘルニア)
⑤Trigger-Flex Dart 電極による経皮的髄核摘出術:(頸椎椎間板ヘルニア)
⑥脊髄刺激療法:(腰椎手術後症候群、慢性難治性疼痛)
図4:硬膜外内視鏡下神経剥離術

慢性的な痛みでは、運動療法は重要な治療法の一つです。長く痛みで悩まれている方は、動くと痛みが来るのではないかという不安から動かないことが習慣となって、これが筋力の低下、筋肉が固くなり、また関節の動きが悪くなりこれがさらに痛みを起こしてしまうという悪循環に陥ってしまいます。こうなってしまうとたとえ内服や注射で痛みが取れても、身体の運動機能は回復しませんし、痛みの悪循環がまた始まってしまうかもしれません。当院では専門の医師・理学療法士が正しい運動の方法を指導します。
痛みが長く続くと上記の身体問題だけではなく心にもその影響が出てきます。慢性の痛みが続くと憂うつになり、どうしようもない不安が起きてきます。逆に憂うつな気分や不安は身体の痛みを強めてしまうことがわかっています。また,最近では、幼少時のつらい体験、大人になってからの社会でのストレス、家庭でのストレス、またさまざまなこころの病気が慢性の痛みに関係していることも分かってきました。当院では心と身体の両面から痛みを捉え,スタッフと患者さんが話し合って同じ目標に向かって進めることがとても重要と考えています。
当院では医師、看護師、理学療法士、公認心理師がチームを作って、多面的アプローチで治療を進めていきます。毎週1回、多職種が集まってカンファレンスを行っています。そこでは患者さんの問題点をいろいろな職種の立場から考えて、意見を出し、情報をみんなで共有します。そして同じ目標をもって治療計画を立てます。
①医師は診断を行い、内服、神経ブロックなどの治療計画を立てます。
②理学療法士は身体機能の評価を行い、公認心理師と協同して痛みがなぜ慢性化するのか。どうすれば慢性痛の悩みから脱することができるのかを丁寧に
説明します。そして患者さんに最適な運動療法のメニューを提示します。
③公認心理師は心の問題が慢性痛の原因になっている可能性がある場合面談を行い、必要に応じて質問紙形式の認知機能検査、人格検査などを行います。
その後カウンセリングを行い、理学療法士と協同して認知行動療法を行います
④看護師はチーム医療が円滑に進むように患者さんと治療者との間の橋渡しをします。